ドナー失格ーー『青い鳥は生きている』 2024/01/31 by Ω No comments 森忠明 NHK東京放送児童劇団の座付き作者になってから四半世紀が過ぎた。小一から高三までの少年少女二百名は、プロの俳優にはない魅力を持っている。今夏、新宿で私の処女戯曲が彼らによ Continue reading →
出前ピアニストーー『WA・O・N~夏の日のトランペット』 2023/12/31 by Ω No comments 森忠明 三月末日、多摩川べりでつくしを摘んでいると、土手のほうからトランペットが響いてきた。奏者の姿は見えない。練習らしい。桜と夕陽を眺めながら、攻撃的なまでの音楽に耳を傾けた。何という曲か知らないが、春愁 Continue reading →
まだ未知男――『とうちゃん』 2023/11/30 by Ω No comments 森忠明 前回に続いて父親というものを考えたい。三月二十二日、娘の卒園式に列席すると、修了証書は母子がペアで園長から受け取る仕儀になっていた。川の字が立った形で受け取るのが最善なのに Continue reading →
隣接異次元――『お父さん、あのね…』 2023/10/31 by Ω No comments 森忠明 昨夏、K少年院の盆踊り大会に招待された。十四歳から二十歳までの若者八十人と「21世紀音頭」「好きになった人」「血液ガッタガタ」などを踊って汗をかいた。休憩時間にトイレへ行く Continue reading →
百円ハウス――『木の上のお城』 2023/09/30 by Ω No comments 森忠明 胎内回帰願望か退却神経症か分からないが、八歳前後の頃、私は“かくれが”作りに凝った。場所は国立立川病院と米軍基地にはさまれた原っぱ。深さ一㍍くらいの穴を掘り、その上を古トタ Continue reading →
我が犬の恩――『しっぽを ぱたぱた』 2023/08/31 by Ω No comments 森忠明 十九歳の秋、私は師匠の寺山修司から詩の朗読についての小論を書くように言われた。十枚足らずの中に三箇所も師の本からの引用があった。それが気にくわなかったらしく、「ぼくを番犬み Continue reading →
片恋地獄篇—―『ごめん』 2023/07/31 by Ω No comments 森忠明 先週、地元のロータリークラブで講演をした後、会食していると、ワインをきこしめして赤い顔になった幹事のO氏が、「森さんの初恋はいつ頃ですか」と言った。「小学三年生の二学期かな Continue reading →
ぬれぎぬ――『トランプ占い』 2023/06/30 by Ω No comments 森忠明 国内最大手の銀行に勤めているMは私の高校時代の級友。横浜のマンションで一人暮らし。先日遊びに行くと、七十万円もした油絵が梱包されたまま壁に立て掛けてあった。「なぜ飾らないん Continue reading →
黒い蝶を追う――『痴人のたわごと』 2023/05/31 by Ω No comments 森忠明 「あなたの創作に一番欠けてるものを持った本が手に入りましたんで取りにきませんか」と、エラソーな電話がかかってきたのは今月九日。その人、石井道郎先生は九州帝大出のエリートだし Continue reading →
二重虹のように――『ノートに書いたながれ星』 2023/04/30 by Ω No comments 森忠明 タクシー運転手をしている幼なじみに言わせると、私は「日本一セコイ作家」なんだそうである。理由は「死んだ姉貴のことだけで何冊も本を書いちゃったり」して「取材のためのタクシーな Continue reading →