「新型コロナウイルス」問題を素人なりに考える

鳴海游

   
「新型コロナウイルス」に関して地元の市民団体に提案した内容を掲載させていただきます。
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(3月20日)
 
皆様
 10月の消費税増税と「新型コロナ」で、いま人々の生活が危機に瀕しているので、緊急政策が必要とされている点は論を待たないと思います。
 この「緊急政策」をまとめるためには、まず「新型コロナ」についてのある程度の科学的共通認識を形成することが不可欠です。
 「新型コロナ」について科学的に考えることは素人には困難なことですが、私たちが主権者なのですから、私たちが判断することは避けられません。
 ということで、「新型コロナ」についての現時点での私の状況認識をまとめてみましたので添付致します。素人の考えですので、誤りも多いと思いますが、ご批判いただけましたなら、幸いです。
(以上)
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「新型コロナウイルス」問題を素人なりに考える
  
一、なぜ素人が「新型コロナウイルス」問題を考えるのか
 昨年10月の消費税増税によって、日本経済は深刻な打撃を受けたわけですが、さらに今、日本は「新型コロナウイルス」(以下では「新型コロナ」と言う)に襲われています。
 それで、「新型コロナにどう対応するべきか」という問題が、政治の世界においても、最重要の課題になっているので、この問題について考えてみます。
 こういうと、<素人がこのような専門的な問題を考えても仕方がないのだから、専門家の言うことを聞くしかない>と言われるでしょう。しかし「専門家」なら「新型コロナ」についての「正しい知識」があるのか。
 専門家が「正しい知識」を教えることができるのは「既知」の事象についてであって、「新型コロナ」のような「未知」の事象について<「正しい知識」を知っている賢者>など存在しないのではないか。むしろ知識を欠いていることの自覚(=無知の知)こそが大事なのだと思う。 
 「専門家」の提言というのは実際にはいろいろな利害と結びついている。そして提言を受けるにしても、どの提言を採用するかを決めるのは、素人の政治家であり、究極的にはその政治家を選んだ「主権者」ということになる。そうであれば、素人の我々(主権者)がこの問題を――政治の問題としても、科学の問題としても――考えなければならないでしょう。(ここで「考える」といっているのは、<学んだことを思い出す>ことではなく、正解が見つかっていない問題について考えるこです。この点については、岩田健太郎氏――神戸大学医学研究科感染症内科教授で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」内の感染対策のデタラメぶりを暴露した人――の「「感染症は実在しない」あとがき」 ( https://georgebest1969.typepad.jp/blog/2020/03/%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E3%81%AF%E5%AE%9F%E5%9C%A8%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%82%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%8D.html )をご覧いただければ幸いです。)
 そこで以下では、ネットから収集した記事をもとにして、素人なりに、「新型コロナ」に関する情勢と必要な対応策を検討して見ます。
  
二、「新型コロナ」感染状況はどうか?
 「人口1万人当たりの感染者数を比べると、我が国は0.06人にとどまっており、韓国、中国のほか、イタリアを始め、欧州では13か国、イランなど中東3か国よりも少ないレベルに抑えることができています。」( https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0314kaiken.html )
 これが安倍首相の見解(3月14日)ですが、日本のPCR検査の実績数は、諸外国と比べても圧倒的に少ない。3月14日時点での人口100万人あたりの検査数は、韓国5106.99、イタリア1418.16、台湾679.38、イギリス562.18に対して、日本は211.87に過ぎません。( https://clearing-house.org/?p=3557 )
 上昌弘氏(医療ガバナンス研究所理事長)によれば、医師などが求めたpcr検査の大部分を相談センターが断っていて、3/9を例に取ると5520件中、251件しか実施されなかった。
( https://twitter.com/KamiMasahiro/status/1239673296305541120 )
 つまり「1万人当たり0.06人」という感染者数は、氷山の一角に過ぎないことは明らかでしょう。
  
三、「新型コロナ」はどこまで拡大するか?
 「新型コロナ」はどこまで拡大するのか?ドイツのメルケル首相は、「専門家の見立てでは、ドイツの人口の60%から70%が感染する可能性がある」(3月11日)と述べています。
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200312/k10012326741000.html )
 またイギリスでは3月12日、ジョンソン首相が他国と一線を画す計画を実施すると発表しましたが(これは後に修正されましたが)、そこでは「人口の少なくとも60%が新型コロナウイルスに感染」することが見込まれています。そしてイギリス政府の専門家チームは、その場合は「おそらく数十万人の死をもたらす可能性が高い」と見ている。
( https://www.technologyreview.jp/nl/the-uk-is-scrambling-to-correct-its-coronavirus-strategy/ )
 アメリカはどうかと言えば、「米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は13日、米国で新型コロナウイルス感染防止の対策を何も取らなければ、国内の感染者が少なくとも1億6千万人、死者が20万人に上るとの試算があると報じた。」
(https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020031201000674.html )
 日本でも3月12日には北大の西浦博教授らの研究チームによる「新型コロナウイルスの感染拡大防止策を何も行わなかった場合、国民の9%が発症する」との推計が発表されています。( https://www.hokkaido-np.co.jp/article/401637 )
 ただし西浦教授らは、「既に集会の自粛などの対策が行われており、実際にこのような大規模流行が起こる可能性は低い」としていますが、はたして、現在の対策で大規模流行を食い止めることができるのか。
 その後、尾辻かな子議員のツイッターで紹介されている資料「大阪府・兵庫県における緊急対策の提案(案)」は、西浦教授らが作成したものとされていますが( https://twitter.com/otsujikanako/status/1240846438474469376 )、そのなかに次のような図があります。
  

  
 これを見ると――日本での感染がいまは抑え込まれているように見えるが――今後日本もイタリアやイランと同様な状態になる可能性は否定できないことが分かる。「新型コロナ」は高齢者には特に危険ですが、日本はイタリア以上の高齢化社会で、80歳以上の人だけでも一千万人を越えている点も考慮しなければならない 。
  
四、「新型コロナ」の抑制は必ずしも成功していない
 じっさい「新型コロナ」の抑制は必ずしも成功していません。
 兵庫県内では3月17日の時点で、5つの病院で院内感染が発生していて、外来診療や入院患者の受け入れ休止により、地域の医療体制が揺らぎつつあります。( https://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/202003/0013200824.shtml ) 
 岩田健太郎氏は、3月6日時点では「日本の対応はおおむねうまくいっていると思う」と言っていましたが、( https://toyokeizai.net/articles/-/335971 ) 3月17日には「兵庫県はクリティカルな状況です。肺炎で原因がはっきりしない、高齢者の有症状者は積極的に検査すべきフェーズです(米国CDCと同じ)。検査を出し渋るフェーズではないので、必死にクラスター探しをせねば。」( https://twitter.com/georgebest1969/status/1239718658915495938 ) と危機感を募らせています。
 他方、上昌広氏は3月19日には、「日本の致死率が3.5%ということは、大部分の感染例を把握できていないことを意味します。流行状況は原理的に判断できないことになります。濃厚接触者を探し、クラスターを分析する時期は終わっています。定点観測のような仕組みが必要です。」としています。( https://twitter.com/KamiMasahiro/status/1240414032311377920 )
 PCR検査を現時点で、患者の早期発見や「クラスター探し」のために行うのか、それとも「定点観測」も加えるべきなのかは、――PCR検査にどれだけ人的資源を回すべきかという問題もあり――素人には判断できません。しかしPCR検査の抑制によって、①感染の全体状況が把握できず、②感染の疑いがある患者が放置されて感染が拡大し、③早期発見で救うことができる命も失われることになるのは、明らかでしょう。

五、「医療崩壊」をどう防ぐ?
 世界的にはできるだけPCR検査をするというのが当たり前の考え方で、既に見たように,ほとんどの先進国では、検査を拡大しており、WHOのテドロス氏も「検査、検査、検査。疑わしい例は全て検査するのだ」と述べています。( https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020031701002814.html ) 
 ところが日本だけはガラパゴス化しているようで、政府による検査の抑制が続いており、また<むやみに検査を拡大すると軽症者でベッドが埋まって、本当に治療が必要な重傷者を収容できなくなる>という理屈で、検査の抑制を擁護する論者も少なくありません。しかし検査が抑制されているのは、ほんとうは「感染研」などの都合によるものであることは、3月10日の参議院公聴会ですでに明らかにされています。( https://lite-ra.com/i/2020/03/post-5308-entry.html )
 たしかに現在の制度のままでは、「医療崩壊」が生じる恐れがあることも事実でしょう。浅香正博氏(北海道医療大学学長)によれば、
 「無症状や軽度の症状の人もまとめて新型コロナウイルス感染症と診断されるので、指定感染症である以上、有無を言わさず入院隔離措置が執られることになる。そうすると、感染症指定医療機関ではない一般の医療施設でも入院させざるを得ない状況になり、逆に院内感染を拡大させる可能性が増してくる。」( https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14225 )
 しかし、これは制度を変えればよいわけで、浅香氏もつぎのように提言している。
 「本感染症を指定感染症から解除する時がやってくると思われるが、そうなってくれると通常のインフルエンザと同様に軽症の場合は自宅待機を勧めることが可能になり、医療における混乱が生じる可能性は減少する。」( https://twitter.com/georgebest1969/status/1240441401327775745 )
 じっさい愛知県ではすでに「新型コロナ」感染拡大で病床の不足が懸念され、3月18 日の専門家会議で、県の医療関係者からは軽症の患者が自宅やホテルなどで過ごせる仕組みを作ることなどが提案されていますし、( https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20200318_119821 ) 岩田氏も「今は応急的に、軽症者は家で寝ていてくださいというメッセージが出ているが、家の中で二次感染が起きてくることになる。理想としては、そういう軽症患者が居住できるような「セミ(準)医療機関」(的な存在)があるといいと思う。ホテル以上、病院未満みたいなところだ」としている。( https://toyokeizai.net/articles/-/335971 )
 こうした指摘を踏まえると、PCR検査を拡大すると同時に、「新型コロナ」に関する制度を変更して、無症状者・軽症者は入院させなくてもよい仕組みにする必要もあると思われます。
  
六、なぜ日本ではPCR検査がこれほど少ないのか。
 ところで、日本では、なぜここまでPCR検査が抑えられているのか。
 その理由は、日本の官僚制度にも原因があるようです。
 上昌弘氏によれば、「今回の対策を仕切ってきたのは、感染研・医系技官・医科研・慈恵医大のカルテット」だが、これらは旧陸軍(731部隊など)や旧海軍の流れを汲む勢力となのだそうです。( https://www.fsight.jp/articles/-/46603 , https://www.fsight.jp/articles/-/46604 )
 また、上氏は、佐藤章氏のインタビューには次のように答えている。
 「思惑が一致したんです。官邸が感染者数を下げたいと思ったのは間違いないと思います。感染研も検査のキャパシティを超えています。だから、感染者数を少なく見せたいという官邸と感染研の思惑が一致した」( https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020031600002.html )
 上氏の慎重な物言いを私なりに解釈すると、<「感染研」等の官僚組織は「大日本帝国」のそれから連綿と続いているものであるが、彼らにとって大事なのは――「国民」の利益ではなく――官僚組織自体の「利害」であり、その「縄張り」を守り、拡張することである。彼らの『論理』からすれば、「感染症」検査は自らの「縄張り」のうちで行われるべきもので、その作業量が自らの「キャパシティ」を越えたからといって、民間に任せるわけにはいかない。そうした官僚の「利害」が“新型コロナ対策もうわべを取り繕えれば、それでよい”という安倍政権の思惑と一致した。> そう言うことではないでしょうか。
  
 諸外国ではほとんど全力で行われているPCR検査が、日本では極端に抑えられている。このことは、<今日の日本の政治と行政の「原理」が如何に憲法の精神と国民の利益を無視するものであるか>を如実に物語っていると言えるでしょう。
 
(なるみゆう)
 
(<「未知」の事象なについて>を<「未知」の事象について>に、<PCR検査の拡大する>を<PCR検査を拡大する>に修正しました。――編集部2020.3.21)
 
(pubspace-x7684,2020.03.20)