生き物語- 自然は尋常ではない!枯れすすき (尾花)の妙 47話

若生のり子(NORIKO WAKO)

 

古代万葉の世界に詠まれるより遥か以前から

枯れては 枯れては

力強く青々と芽吹き 穂を垂れ 営々と繰り返す

輪廻

時空の風・すすき

壮大な悠久の流れに思いを馳せ

透明にたなびく心

人事の及ばぬ 果てない命

白昼夢

 

 

枯れても尚、咲き誇っているかの如く 妙変

 

 

 

 

 

 

凍てつく寒風をたゆやかに吹き流す

 

 

 

 

 

 

滲む

 

 

 

 

 

 

さまざまに寄り添う

 

 

 

 

 

 

虚飾を剥ぎとった簡潔なフォルムの群落

 

………………….…

 

『枯れすすき』と言えば、森繁久彌の「船頭小唄」を思い出してしまいますが

かような人間世界の刹那の抒情など全く感じさせず

晩秋の長野のビーナスラインから望む丘陵を埋め尽くす枯れすすきの群生は 壮観

無限の天空と 大地との

橋渡しの化身のよう

 

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ちなみに、「万葉集」で すすきを詠んだのが44首ほどあるそうです。

その中から一首
波太須珠寸 尾花逆葺 黒木用 造有室者 迄萬代 (太上天皇(元正天皇)巻8-16379)
はだすすき尾花逆葺き黒木もち造れる室は万代までに

諺の<幽霊の正体見たり枯れ尾花>はよく知られていますが
江戸時代の俳人横井也有の俳句集 『鶉衣 (うずらごろも) 』 にある
「化物の正体見たり枯尾花」が出典だと云われています。

また、蕪村の句に
狐火の燃えつくばかり枯れ尾花
があります。

こうしてみますと、いずれもすすきから 何らかの尋常でない世界の背景が浮かび上がってきます。

 

わこう のりこ (Artist)
(pubspace-x5745,2018.12.30)