好漢―森忠明『ハイティーン詩集』(連載11)

(1966~1968)寺山修司選

 

森忠明

 
好漢
 
空という空が俺を決して記憶しないでいるように
俺も空の境涯を決して諒解しないだろう
ただ愛くるしく いかにも思慮深げな首元のおまえと
ただ好漢の俺は
この月見そばをすすり終え遠ざかりあえば
一等けれん味のない別れとなるだろう
こういう調子の詩は往々嫌味なものになるけれど
こういう別れとこういう別れを書いた詩は
俺を詰りはいい感じに生かすだろう
そして俺は幽かな胃アトニー 上下左右転回する首と連れだって
今朝も最寄りのヒトをいつくしみ
最寄りの駅へ足早に
 
 
(もりただあき)
 
(pubspace-x7988,2020.10.31)