7月16日、参議院予算委員会での参考人・児玉龍彦氏の発言記録

鳴海游

 

    新型コロナについては、先に「これからの「対コロナ戦略」を考える――児玉龍彦氏の提起を踏まえて」で、5月16日時点での児玉龍彦氏(東大先端研)の提起(「コロナと闘う戦略図」)を紹介したのですが、その後も感染状況は日々変わっており、7月に入って感染が再度拡大していると思われます。
    こうした状況に私たちはどう対応したらよいのか?そう思っていたところ、7月16日の参議院予算員会で児玉龍彦氏が参考人として意見を述べられていますので、今回は、同委員会での児玉氏の発言記録を掲載することにします。また各議員の児玉氏に対する質問は要旨のみ記載しています。なお、児玉氏の発言中にある資料は、https://www.ric.u-tokyo.ac.jp/topics/2020/ig-20200716_1.pdf です。

 
7月16日、参議院予算委員会での参考人・児玉龍彦氏の発言記録
 
(杉尾 秀哉:一旦収束している感染が拡大している。何が起きているのか。第二波の序章と考えてよいのか。)
(35.22-38.26 数字はhttps://www.youtube.com/watch?v=tFcF8bTmJ4g上での時間です。以下、同様。)
[児玉]私は今日、極めて深刻な事態を迎えつつある東京のエピセンター化という問題に関して、国会議員の皆様に全力を挙げての対応をお願いしたくて参りました。
   いま杉尾議員の御指摘にもありました通り、このウイルスは、中国が発生なんですが、コロナウイルスというのは、中国南部から、風邪コロナという様々なウイルスがあります。先ほど発生率の問題がありましたが、私ども抗体プロジェクトから、交叉免疫という似たウイルスに対する免疫で、東アジア諸国では、一定の数に抑えられる傾向が強いということを予測してまいりました。ところが第一の波、武漢、中国からの旅行者から来たものは、割と自然と消えて参りました。第二の波、これは例えば東京大学でも欧米からの帰国者が千名を数えましたが、3月下旬をピークとして起こっていたものも、追跡してみますと、実は緊急事態宣言を発する前から自動的に減り出しております。
   これは一体どういうことなのだろうかと思って、非常に興味をもってみて来ておりましたが、ところがそこでもう一つ、東アジアの国が力を入れて対応しているエピセンターと言うのに気づきました。クラスターとエピセンターは全く違います。エピセンターはそこに一定数の無症状の方が集まり、さらにその中に、私ども7月の7日に緊急の記者発表を行いましたが、PCR陽性の方の中でも無症状の方をみると、抗体が作られない方がいらっしゃる。いわゆるスプレッダー(拡散者)になる可能性がある人がいらっしゃることに気づきました。そして、第一、第二の波の時にこれをきちんと制圧して無症状の感染者もなくすことを行うべきだったのに、それが行われないままに実際に東京の中に今、エピセンターが形成されつつあると思っております。
   これをもう一つは、遺伝子のゲノム疫学で見ますとと、第一の波は武漢型です。第二の波は武漢型からイタリア・アメリカ型に変わっていっております。ところが現在、私どもも地方自治体に支援を頼まれて参ったりしますと、ゲノム配列の報告を見ますとと、東京型・埼玉型になってきております。つまり日本の中にエピセンターが形成されている。これを国の総力をあげて止めないと、ミラノ、ニューヨークの二の舞になると懸念しております。
 
(杉尾:エピセンターは感染集積地、震源地のことですね。検査率も増えるにつれて陽性率も上がっている。これをどういうふうに理解すればよろしいか。)
(40.00-43.56)
[児玉]皆さまにお配りしている私の資料の3というページを見て下さい。この資料は東京大学アイソトープ総合センターの協議会のHPにも掲載されておりますので、ダウンロードしていただいて、閲覧、使用していただいても構わないものであります。3のところに出ておりますのは、クラスターとエピセンターの違いという概念を示しております。
   それで、クラスターというのは、外来の感染者が来て、それが最適な条件でないところで増えていくことで起こるものであります。それに対してエピセンターというのは、そこで自立的に感染が増えていくことが起ります。それでエピセンターになるとどういうことが起こるかというと、一般には感染の径路ということが言われます。
   飛沫感染、これは「20uMのものが散って、食事や何かに落ちますよ」と、2メーターのソーシャルディスタンス。
   それから接触感染、これは例えば消化器に感染して嘔吐物などがあると非常に高いコピー数が出る。それからお手洗いのクツの裏なんかから一番感染が広まるという、そういうので言われています。
   ただ実際にはもう一つ心配なものがありまして、実は5uM以下位の粒子でも感染してしまう、空気感染。例えば「痘そう」などが怖いのは、この空気感染があるからであります。
   これを皆さまの方では「ガイドラインで一律に分けられる」とお考えかもしれないですが、それは全く違います。いま細かな感染疫学が分かって参りましたが、精密医療では感染者の数とスプレッダーのような大量排出者がいるかで、この確率が変わって参ります。ですからいろいろな、たとえば電車に乗っても大丈夫というのは、感染者が少なくて、排出量が少ないという前提で作られております。それで何か事故が起こると「ガイドラインに従っていないからいけない」ということを言われますが、それはガイドラインというのが、実は感染の状況によって全く変えなくてはいけない。
   ですから、エピセンター化してしまったら、劇場も電車も危険になってしまう。このエピセンターの制圧というのを国の総力を挙げてやらないといけない。例えば、私どもICUで扱う際には、人口呼吸器を使いますから、飛沫します。それで飛沫するからICUではふつうのマスクではダメです。だけどふつうの御劇場でそういうことを期待しないのは、感染者の数も少なくて、しかも交叉免疫もありますから、「一定の軽いものであれば、これは大丈夫であろう」というそういう知識に基づいてやっております。
   それでエピセンターが一回起こりますと、次5ページ目のところを見ていただきたいんですが、制圧にはだいたい20万PCR以上が必須です。一番目の例はなぜ韓国がPCRを整備したかと言うと、宗教団体が20万人、これが一大の感染の原因になるということで、PCRが一挙に整備されました。続いてシンガポール。外国人労働者の量、これを制圧するのに、30万PCRと抗体検査を行っております。更に6月に起こった北京の食品市場、これは22万PCRを行ってエピセンターを制圧しようとしております。このようにエピセンター対策が必要となっている。こういう状態にいまなっているところで、国会が迅速な対応をされることを期待しております。
 
(杉尾:具体的にどうすれば良いのか。先生は、これまでの日本の対策は失敗だったと言っている。ただ全国一律のステイホームは実はナンセンスの極みだと、こんなことをやっていたら日本は潰れちゃう、と。そこで経済と両立させるためにどうすれば良いのか、それをお答えください。)
(44.41-48.00)
[児玉]いま一番大事なのは、感染集積地とそうでない所を分けることです。1月18日に武漢に入った鍾南山先生は、1月19日に北京へ戻って、「武漢の閉鎖を進言した」と言われますが、じっさいに彼が行ったのはまったく違います。感染集積地と非集積地を分けて、私ども見ていてびっくりしたんですが、千床の病院を二つ作りました。そしてそこに5万4千人の医療従事者を投入して、これの制圧に当たりました。
   ようするに全国一律のステイホームがなぜ間違いかと言うと、20世紀のスペイン風邪の頃は、全員一律で「マスクをしましょう」と、「距離を取りましょう」と、「追跡をしましょう」だったわけですが、21世紀は基本的に遺伝子工学と計測科学、ロボットや何かと情報科学を用いまして、精密医療という、要するに感染集積地をしっかり指定して、その集積地という面を制圧する。その面の制圧を次々と行なっていって、コロナウイルスの一番の問題は、クラスターではなく、このエピセンターを形成する。感染力自体は弱いし、交叉免疫がありますからすぐ消えて、無症状の人も、症状のある人も、発症前に感染する。それで致死率も一見低く見えます。ところが時間を追って、その率が増えてくる。クルーズ船の時も、全員下船した時は、重傷者・死者はあまりおりませんで、公共交通機関で帰っております。それから14人が亡くなっております。
   ですからいま新宿エピセンターを制圧するには、この制圧する地域にしっかり、それでその地元の医師会などにこれをやらせてはダメです。地元の医師会はそこの診療にあたっていただかなくてはならない。それで、東京大学でもどこでもよい、会社でもよい。そのための計画は本日の資料にぜんぶ見積書まで添えて書いてあります。東京大学の、例えば、我々の計測科学のあれでは、テカンという会社とやっておりますが、5千人1日でできます。5千人1日でできると、8検体プールですと、4万人できます。2セット造れば、もっとできます。それでプールにしてますから、8万人出来ると言っても、5万人というふうになります。こういう作業をやるのには、例えばロジスティックスは、SRIだとかLSIメディエンスという民間の非常に大きな検査企業が、検体の輸送、情報伝達のロジを持っております。それから計測科学においては、専門の会社があります。計測を短くするキットは、タカラバイオで、素晴らしいものができております。ですから国会にぜひお願いしたいのは、こうしたものを総力をあげて投入して、一挙に、しかも責任者を明確にしてトップダウンで、前向きの対策を直ちに始める。
   そうしないと今日の勢いでいったら、来週は大変になります。今日の勢いでいったら、来月は目を覆うようなことになります。その対策は、交叉免疫のある東アジアの日本なら、必ずできます。
 
(伊藤 孝恵:県内ないし一定エリアに限定した観光はどうなのか?)
(1.36.47-1.41.26)
[児玉]私は今回のコロナ対策の進め方、法律論的にも制度的にもちょっと間違いが大きくて、観光業者の方が非常に苦しみ、飲食店の方が悩まれ、採用予定が取り消され、病院や介護施設が不安から離職者をむかえているということに、もっと国を挙げて向き合う。やり方を換えないといけないと思っております。
   いま仰られていることは、我々から言うと、全国一律の大艦巨砲型の、これは百年前のスペイン風邪のときのやり方であります。例えば後藤新平が、スペイン風邪の前ですけど、日清戦争から帰ってくるときには、あれをつくるとか、防疫システムですよね。
   それで21世紀に入りまして、これが今回、先ほどのエピセンター制圧という格好で、東アジアで出てきている劇的に変わっているやり方がある。要するに、一つは膨大検査を前提にする。ですから、お医者さんとか従来の保健所ではなしに、遺伝子工学、それから計測工学、それから自動制御、それから情報科学、そういうものを駆使して、もっと精密に感染の拡がっている区域かなんかを押さえる。そして全国一律ではなしに、先ほども申し上げましたが、中国の場合は鍾南山先生の一番見識だと思ったのは、武漢をアイソレートするだけでなしに、そこに全国から、非感染地域の経済を盛り立て、そこから持っていく。それで非感染区域においても検査やなんかを徹底してやる。
   ですから、例えば旅行に行かれるのであれば、総理大臣以下40名の方をPCR検査をやれば、すぐ分かるんです。そして行って全力でボランティアを支援して、災害復興をやればよい。ですから21世紀型の対応を全力でやらなければならない。
   それで21世紀型の対応をやるためには、私の提案の中に書いてありますが、国会の責任が極めて大きいです。いま何故精密型の対応ができないかと申しますと、例えば感染検査というのは、厚生労働省が特定された検査所でないと検査ができない。だから私ども外の検査ができないです、何千検体検査処理能力があろうと。だからいま我々がやっているのは極めていびつな格好でして、臨床研究という格好でやっていますが、これは臨床研究でもなんでもありません。
   二番目に個人情報の扱いがバラバラであって、コンタクト・トレーシングなど健康個人情報を扱うのに責任者がいません。ココア[新型コロナウイルス接触確認アプリ]の話が先ほどありましたが、厚生労働省がやるというけれど、ココアはオープンソースで作られていたもので、それが厚生労働省の下でベンダーを置いてやるという格好になっておりまして、じっさいに答弁を作っている方が分からない。それで例えば、ですからいま非常に有効なのはココアですよね。ココアをみんなやれば、感染した人は皆分かるから、感染集積地がすぐ分かります。ココアにはCIOの統括補佐官、楠正憲さんという方がいらして、ココアを作って皆から来るいろんな質問に答えております。だったらココアを、コンタクト・トレーシングを本当に活かそうとしたら、そういう人を前面に立てて、移動しても大丈夫な21世紀型の対応を、国会を直ちに開いて、企業も研究所も大学もみんなすべて。
   それで従来の対策が何故失敗するかと言うと、病院の人は病院の中、厚生労働省は医療費の抑制。だけど医療費というのは、我々ずっとやってますからよく知ってますが、治療に対して、受益者に対して払うという医療形態の原則があります。それで今起こっているのは、社会全体の安心安全の対策ですから、これはまさにこの委員会でやっている予備費かなんかを使って、しかも恒久的に続くものではありません。今週投与すれば、一か月後の百倍価値があります。
 
(伊藤:文科省が学校で子供に「基本的には常時着用」の指示を出しているが、熱中症の恐れもあり心配だ。子供のマスクの着用についてどう考えればよいのか。)
(1.51.42-1.57.20)
[児玉]これはですね、ガイドラインというものの考え方を変えなくてはいけない。ですから感染集積地とそうでないところでは、ガイドラインがまったく違います。そのためには感染集積の度合いを詳しく調べるようなモニタリング、サンプリングを各地域でキチンと行って、それ毎にきめ細かくやる。ようするに、先ほども申し上げましたが、精密医療というのは、いまは世界中で一般的になってきています。それで私ちょっと心配しておりますのは、従来の輸入型感染症から、国内エピセンターに変わってきております。
   それでもう一つ、ガイドラインの問題で、注意していただきたいのは、感染の発見された方も保護されるようなガイドラインにしておかなくてはいけない。ある府県の医師会の方から言われたのですが、PCR検査で感染が指摘された看護学校の学生さんが退学に追い込まれた。ある進学校に合格を内定した方が、自主取り下げになった。こういうことが現実に起こっております。それで一般的に検査をやる際に、これらを感染した方を守るためにやるということをもとに徹底して行い、そしてその人たちに、もうひとつはかなり法律の立て付けとして、自主的な判断が出来る可能性を残しておく。
   私、先ほどから申し上げてますが、このウイルスは、一定の交叉免疫もあって、ある一定のクラスターとか、エピセンターでの対応、もしくは手術室の中、病院の中での対応と、こういう国会でのガイドラインは違う。例えばあちらに坐っているのは明らかに「三密」に当たります。ですが、それはある程度「この中に感染者がいないであろう」という認識の上に判断を変えている。ですから、この法律の立て付けを変えて、先ほど申し上げなかったんですが、ここ[PDF資料の(8)]に書いてある、現行の法律をもっと変えて、全国一律の仕組みではなしに、例えば各自治体毎にきめ細かく変えて行けるようにする。
   それで例えば、先ほどのお話にもありましたけど、学校の問題と同様で、隔離も同じように問題があります。自宅隔離が良い場合も必ず出て参ります。生活保障があって自宅隔離。それから施設が良い場合もありますし、病院に入った方が良い場合もあります。こういうものを各地区の状態に応じて、本人の選択を含めて、それを支援する。だから感染が拡大しなければ家でも良いし、感染が拡大する心配があったなら、やっぱり本人の状態から見ても変えて行けるし、どんどん変われるような仕組みにする。
   それで例えば、学校でも難聴の子供さん、私どもでフェイス・シールドで曇らないものを難聴の子供のお母さんに配っております。学校に行くとマスクがない[ある?]と聴覚障害のお子さんは伝わらないです。それでフェイス・シールドでやろうとしたら、医師会から「マスク着用がないとダメだ」と言う。だけど「マスク着用がないとダメ」という論拠がもし空気感染レベルのエピセンターだとしたら、これは休校にしないといけない。飛沫感染のレベルであればフェイス・シールドでもよい。
   こういうふうに非常に精密化した診断基準をやっていって、それで先ほどの質問で、ちょっと文科省に求めても難しいというのは、各、いろいろな、医師会なんかも、どんどんガイドラインも出て来ております。ですから文科省でできるのは、あくまでもそういうものを基にした大まかな分け方であって、現在の段階で一番大事なのはむしろ、各地での感染集積地での度合いを下げないと、いま[感染集積地での度合いが]上がって言ったら、どんなガイドラインを決めても、来週には無効になってしまう。
   要するに劇場感染が起り出したということは、その劇場感染のメカニズムは後で、例えば、劇場感染がおこるとその後で「ガイドラインに従っていない」という非難が起ります。だけども、これは被害者を鞭打つよう格好になるだけであって、そのガイドライン[の前提]がいま新宿では違うレベルになっている。そしたら新宿の地域としての感染頻度を下げない限り、ガイドラインを基に非難しても、被害者が被害者を批判するような悪循環に成りかねない。
   それでいまの学校の話は、よく理解いただきたいのは、感染集積地、度合いによってまったく異なります。それから例えば鹿児島のように、突然、最初少なかったところでワッと集団感染が起りますと、途端にガイドラインが変えないといけない。そうすると今ですね、当初と違って、各地の医師会、医科大学が日本にはありますから、そう言うところでかなり情報が集積していっていますから、そういうのに従って変えて行けるように、むしろ法制度を変えて行く。それでもう一つは、文科省、厚労省ではガイドラインが作れない。そう思います。
 
(伊藤:エアロゾルの存在についてご説明をお願いします。)
(1.59.00-1.59.19)
[児玉]要するにこの感染御度合いは、感染者の多さと、それから免疫不全のような方でスプレッドする方がいるかいないかによって、変わって参ります。それでそれが低い状態になると、エアロゾル様感染のものは必ず起こります。
 
(伊藤:エアロゾルに関する厚労省の所見についての児玉先生の御考えは?)
(2.01.46-2.02.17)
[児玉]制限だけでは無理です。厚労省とか文科省とか、省庁だけでは制限しかできないという法律の立て付けになってしまいます。ですから国会で国を挙げてワンストップの対策センターを作って、感染者数を減らす、感染エピセンタ―を制圧する。それを今日から、今週からやらないと、大変なことになります。
 
(片山大介:感染が拡大している件についての見解は?)
(2.37.20-3.18.20)
[児玉]いま尾身先生も仰った通りでして、ゲノム解析でみていると、東京と埼玉からのものが一定程度あります。それともう一つ非常に心配なのは、医師会長の方がお詳しいと思うんですが、PCRの検査で陽性率がじりじりと上がってきています。ですから、それはもっとも深刻なのは、先ほどから申し上げている、新宿区なんですが、23区別の陽性率と言うのを見てきますと、新宿を中心にエピセンターから湧き出して、それが池袋、埼玉、神奈川、それからいろんな都道府県に飛んで行っているということがありまして、私ども地方の自治体に行って検討しますと、地方の自治体の話の結論は、「すぐ東京に戻って、東京の感染を食い止めてくれ」というのが、会議の結論になっております。ですから、いま増えているじっさいの数字を見ますと、非常に危険です。
 
(片山:児玉先生の御考えは?)
(2.50.29-2.52.16)
[児玉]いま必要なのは、リスク評価にしても、じっさいにリスクに介入して、リスクを下げようとしてそれがうまく行くかをみると言うフィードバックのサイクルがないと、悪循環サイクルと言うんですが、全国一斉の休業をやると感染が潜行して、潜行すればするほど、エピセンターに集まってしまう。
   ですから、いま例えば、新宿では、ここの皆さんにお配りした資料の6ページ目にありますけれども、じっさいにやろうとすれば、来週からでも[PCR検査を]1日5万で、だいたい10日間で全体のあれを見ることが出来ます。それでそういうことをやってみて、住民がどの程度参加してくれるかとか、事業者がどの程度答えてくれるかというのを見て、次のステップに移っていく。
   それで、そのためには、先ほど費用の問題の御質問がありましたが、じっさいに数を増やすとですね、PCRはスワブで2456円から5887円、唾液は2160円から5591円と、現在の健康保険に基づく測定の4分の1、5分の1にできます。
   そういうものを法律を変えないと、今できません。もしくは法律が変わらないとしたら、国会で運用かなんかをきちんと決議して、やっていただく。そういうもので、じっさいにいまの必要なのは解釈して制限して国民に「こうしなさい」ということで言われていますが、そうではないんですね。政治が意志を持って感染を抑えれば抑えられるという信念と国民を守ろうという熱意があるかないかです。
 
(山添卓:新宿PCRセンターの検査結果をどう見るか、検査の拡充にあたって何が重要か。)
(3.04.20-3.08.08)
[児玉]これは非常に深刻です。飲食業で429人受診して133人陽性という数値をいまお伺いしましたが、これは非常に危険です。それからもう一つ、無職、フリーター等となっている範疇は、おそらく高齢者なんかの方も含む概念にもなってきますし、また生活困難な方とか、そういう方が多いと思うのですが、そこが受信者208人、陽性者49人、23.6%、これも非常に危険な数字です。
   さらに私どもにとっては、抗体検査をやって、今までどの程度の感染率が起ったら、クラスターになるのか。例えばコールセンター。感染者が出て消毒して閉鎖するようになったところの抗体検査で、3%程度です。500人のところで3%感染者が出るということは15人感染でして、5人程度発熱が出ると大騒ぎになって、そこを消毒して閉鎖しますから、経済的に非常に大きな打撃になります。
   それでここに出ておりますのですと、会社員が381人検査して14人、学生が80人検査して3人。こう言うのを見ますと、学校とか会社でも、感染が知らない間に拡がってしまう。これがエピセンターの怖さでして、ガイドラインをいくら守っても、飲食店の人で3割という数値を見ましたら、とても外食というふうになかなか行けない。
   ですからこれは皆さんにこれは自己責任という格好で、ここの人にガイドラインを守れという格好では無理でして、全数検査という、全数と言うと強制的にと間違えられるんですが、そうではなしに、きちっとした検査のシステムを作って、例えば自衛隊の医官の方を百人投入するとか、そういうふうにして、地元の医師会は日常の業務をやっていただきながら、特定の場所でやる。
   例えば、PCR検査と言うと皆さん難しいとお考えなんですが、私も毎週月曜日にやっておりますが、1人1分です。ですから、1時間で私でも60人出来ます、補助の人がいてやっていけば。ですから4時間やれば、320人[240人?]いますから、私と同じようにやる人が百人いれば3万2千人できるという計算になります。それはすべてシステムして、診療の合間にお医者さんが行ってやるんでは無理です。更にPCR検査をたくさん持っているところ、技術者がたくさんいるところで集約的にやる。それで機械化することによって、検査の危険性もグンと減ります。コストは10分の1になります。でプーリングができますから、8検体まとめて一回でやると、一万検体のチェックで8万検体が出来ます。
   それで今必要だと言っているのは、厚労省、文科省でガイドラインが作れませんと申したのは、厚労省の皆さんや文科省の皆さんは一生懸命頑張っていると思っています。ただそこのレベルで個別の対応では無理で、ワンストップの対応にして、直ちに国会を開いて法律を最適化して、法律が変わるまでの間は臨時の申し合わせで、通達なりなんなりで出来るようにする。これを今日からすぐやらないと、この数値を見ましたら、これが二週間前だとしたら、本当に大変です。
 
(山添:検査で陽性と確認された方への対処はどうあるべきと御考えか。)
(3.09.13-3.10.54)
[児玉]今までの一律のやり方を変えて、かなり当事者の実情に合わせて、自治体やその他からも裁量をもって、医療機関とか現実の状態に合わせて、適切に出来るようにきちんと法律を変えて行く。それまでも、まず私がいま申し上げたような個別の状況をきちんと把握して、それからふつうの医療機関ベースの対応に変える。それで医療機関でやる際には、患者さんの状態をよく訊いて、「あなたのところはお子さんがいるか」とか言うことを訊く。それに対する支援を手厚くしていくというのが一つ。
   それから、隔離の一般の病床なんかは、船の科学館みたいな格好にしまして、一般の病床に入れるよりも、そう言うところに入れて、チェックを頻繁に行えるような、ですから、中国は千床の病院を十日間で作りました。日本でもそういうものは、いくらでも出来る。そういうプレハブを作る能力。それから、我々クリーンルームと言うんですが、そういうエアコンの制御できるユニットは、いっぱいあります。ですからそう言うのをアセンブルして直ちにやる。
   そういう隔離政策を、今までの省庁ベースにチマチマ、チマチマやるんではないし、ワンストップで日本の持てる最高のものを持って行って、きちんと迅速にやる。それからもう一つは、隔離や何かと同時に大きいのが、やっぱり追跡だと思います。
(以上)
 
(なるみゆう)
 
(pubspace-x7901,2020.07.19)