亡唄—森忠明『ハイティーン詩集』(連載8)

(1966~1968)寺山修司選

 

森忠明

 
亡唄
 
静夜いかにも孤高にわたくしが
ズボンを寝押ししているからといって
明日よ
わたくしがおまえを希っているとは限らない
わたくしとおまえとの精神的因果 展望を
あえて思い浮かべるのは大儀
で明日はわたくしを一笑に付し
わたくしはおまえを一笑に付し
あぶれた希望のなんと笑止に絶対か
が、お袋は肥りすぎ肩胛骨がないから
肩胛骨の美しい女ととにかく
一緒になる
というのがせめて希望というやつだ
それが叶わず潰えた時
お袋と二人 夕涼みのような気分で
亡びてゆく
というのがせめて希望というやつだ
 
 
●森忠明ノート 寺山修司
  ストリップ小屋で自作詩を朗読したりする森忠明は六尺近い大きな男で、私の〈天井桟敷〉のために書下ろして〈書を捨てよ町へ出よう〉で上演した“夜嵐スーパーマン母殺し”はなかなかの戯曲であった。
 
(もりただあき)
 
(pubspace-x7917,2020.07.31)