デージー―森忠明『ハイティーン詩集』(連載35)

ハイティーン詩集以降

 

森忠明

 
デージー
 
きみは椿が好きなのか
俺は野にあるデージーなんかいいね
こないだ細江英公氏が送ってくれた『写真絵本・妖精物語・ルナロッサ』の中に
かわいいデージーが写ってた
場所はコロラド州スノーマスの大草原
ひなぎくはかわいらしすぎるし
それはもう実に身につまされる作品で
なにしろ臨月の妊婦みたいに肥えた金髪?の初老男が
イチジクの葉っぱも無し
すっぽんぽんで横たわり
よよと泣いているんだぜ
どうしようもなく悲しそうなのさ
そいつをそっと慰めるように
十四五本のひなぎくがそよ風にゆれてる
昨今 泣きてえのにうまく泣けねえ俺には
たまらなくうらやましい姿だから
「プレーリーの丘で泣く男が一番好きです」
と高島屋でスシ食いながら言ったんだ
すると英公巨匠はおごそかな面持ちで
「あの人は本当に泣いたんです」
とおっしゃった
泣いた理由もきいたけど
きかなきゃよかった
俺の泣きたいわけと同じだったからな
 
(もりただあき)
 
(pubspace-x9113,2022.10.31)