水色セータ —森忠明『ハイティーン詩集』(連載33)

ハイティーン詩集以降

 

森忠明

 
水色セータ

― 俺が愛した七代目          
橘家圓蔵は、セーターを
セータと発音した。       

 
東大和のスナックバーで
ナポレオンをなめながら
カッパエビセンばかし食ってた俺を
君はばかにおかしがっていたけど
なぜなんだい
〈くつろぎとは
   あらゆるヒロイズムを
   すすんで失うこと〉
って書いたのはたしかロラン・バルトで
そうだとすればだな
酒の銘柄がよくなかったかもしれない
しかしエビセンは決してヒロイックな食い物じゃないぜ
俺はあの夜、千日ぶりくらいに
心底くつろげていたんだよ
そこへとつぜん
「森先生の
   今の
   心のささえって
   何」
ときた
せんせいの心と頭のささえはだな
君の水色セータの
ゆたかな
ふたつの
ふくらみさ

 
(もりただあき)
 
(pubspace-x8955,2022.08.31)