ハイティーン詩集以降
森忠明
食卓の風景
東京キッドブラザーズ「十月は黄昏の国」のために
今朝もパンが幸せ色にこげる 嫁入り道具のトースターなのに
きまって片側がこげすぎる
朝日に背を向け君は僕のパンに マーマレードとバターをぬりわける
それは僕に(今日)この一日を戦えと言っていることなのかい
人生を戦えと言うのかい 男らしくくじけずに
生きていくのはつらいこと 七人の敵に頭を下げる僕
玄関でつまづき行ってきますと手をふって
生まれたばかりの息子のためと
なんとかやる気になってはみても なんとか元気になってはみても
優しさだけで今日もすべてがからまわり
いつも家路を急ぐ僕なのに 又も夕べの食卓だけは
明日のにおいを立てているんだ
明日も戦えと言うのかい 男らしくくじけずに
生きていくのはつらいこと 今日も我家の灯探し歩く僕
(もりただあき)
(pubspace-x8423,2022.01.31)