四月―森忠明『ハイティーン詩集』(連載22)

(1966~1968)寺山修司選

 

森忠明

 
四月
 
何から何までおどろくほど
心機一転だ
鉄道も走るよ
何もかもだ
長身の男よおまえは
どうする

寒い四月
私立大学のスクールバスの男
田園は意外に怠惰なものだ
おまえよ
柱上トランスのように重い心細さ

ドライアー仕上のトレンチコートの男
見知らぬ土地の巡査
おまえよ
何か尋ねるといい
男はさっきから腹がくちい

よく梳いた髪の
日本文学科の娘たち
祝電はぱりぱりいう
男は例のごとく微熱だ

小雨を三階の便所から
見ている
 
●選者のことば 寺山修司
   森忠明くんは、最近のこの欄のルーキーである。たてつづけに群作を送ってくるが そのどれもがまさしく詩なのだ。
「四月」には青春というもののむなしい実在感がある。男性的で、しかも繊細である。
「昼」という詩にみられる新しい文体のこころみ、「犬」にみられる時間への惜別。
   来月の作品もたのしみに待ちたい。
 
(もりただあき)
 
(pubspace-x8324,2021.09.30)